うつ病の予防のために大切なのは、「休養とストレス軽減」です。今回ご紹介する「ABC理論」はストレス軽減のために、自分でできて効果も大きいので、ぜひ、マスターしてくださればと思います。
「ABC理論」を極端に分かりやすく表現すると、「嫌な出来事があっても、受け取り方を工夫すれば、そんなに落ち込まなくても済む」という考え方です。難しい用語の説明などはさておき、さっそく、事例で見てみましょう。
ある朝、Aさんが職場に出勤したら、すでにBさんが出勤していてパソコンに向かって熱心に仕事をしていました。AさんはBさんに向かって「おはようございます」と挨拶しました。ところがBさんは、返事もせずにパソコンに向かって仕事を続けています。Aさんは無視されたような気がしてなんだか少し嫌な気分になってしまいました、という事例です。
日常的によくある光景ですが、少し嫌な気持ちになってしまったAさんは、自分の声が小さくてBさんには聞き取れなかったのかもしれないと考えたり、あるいは、Bさんはすごく仕事に集中していて気付かなかっただけなのかもしれないと考えたります。でも、Aさんは自分の気持ちをなかなか整理することができません。なぜでしょうか。それは、少し嫌な気持ちになった原因を「相手」に求めているからです。「Bさんが聞き取れなかった」「Bさんが集中していて気付かなかった」というようにBさんの行動に焦点を当ててしまっています。実際にBさんがどのような状態であったかは、こちらからは推測することしかできないので、なかなかスッキリと自分の気持ちを整理することは難しいのです。
ここで、「ABC理論」の出番がやってきます。ABC理論のAとはActivating event(出来事)、BとはBelief(考え方*1)、CとはConsequence(結果)を意味しています。
「挨拶したのに返事がない」という「出来事」(Activating event)があって、すぐに「少し嫌な気持ちになった」という「結果」(Consequence)になったのではなく、この「出来事(A)」と「結果(C)」の間には、「考え方・信念(Belief)」があって、それによって「結果(C)」になったと考えます。
ですから、B(考え方)を自分でコントロールすることで、C(結果)を自分でコントロールすることができるのです。
例えば、「挨拶をされたら、挨拶を返すべきである」というB(考え方)をもっていたら腹が立ってしまいますが、自分の中のBを「世の中にはいろんな人がいるから、挨拶しても返事をしない人もいるだろう」というように変化させてしまえば、特に腹が立たなくなるかもしれません。
「Bさんが聞き取れなかった」のように原因を自分以外のものに求めている間は自分の心を整理することは難しいのですが、自分の考え方次第で自分の感情はコントロールできると考えて、自分のB(考え方)を柔軟に変化させてみると、自分の心を自分で整理することができて、ストレスが減り、うつ状態からうつ病へと落ち込んでいくことも避けられると思います。